民芸箪笥
文様に秘められた伝統「民芸箪笥」
民芸箪笥とはそれぞれの地方で独自に作られた歴史と文化の中で生まれたもので、その地方独特の趣があり、今もなお作り続けられています。重厚な金具と欅の木目を透かす木地呂塗りが特徴の「仙台民芸箪笥」や「南部箪笥」、「岩屋堂箪笥」などが有名です。 伊達藩の下級武士が内職仕事としてつくった武家用の箪笥がはじまりとされ、刀を納める「刀箪笥」や、証文をしまう「門箪笥」、「階段箪笥」など、幕末から明治にかけての暮らしがデザインにそのまま残っているのも魅力です。
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主な民芸箪笥
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仙台は16世紀、伊達政宗公により城下町を築き上げた日本でも有名な都市で、政宗の時代から多くの伝統工芸が伝えられ、仙台箪笥はその中でも代表の一つです。仙台箪笥は江戸時代に仙台藩の武士の内職として始まり、刀や衣類などの収納として使用されてきました。明治、大正期が最盛期となり、現在のデザインが定着。表面材は欅を主体に漆塗りで仕上げ、牡丹模様の唐草金具で装飾されているのが特徴です。
四国四県の面積に匹敵する広さをもつ岩手県は、優良材の産出量は国内トップクラスで、平安末期、平泉に栄えた奥州藤原氏の文化の影響により、旧南部藩、伊達藩全土に普及しました。幕末までは岩手県盛岡市以北と青森県南部、秋田県北部地域周辺が南部藩といわれ、みちのく800年の地方文化と歴史をもつ「南部箪笥」が発展してきました。
岩手県九戸村は文化庁の支援で漆の植栽が行われ、生漆の生産地として日本一の品質と生産量を誇る「浄法寺漆」が有名となっています。他にも同地域には、昭和56年に伝統工芸品の指定を受けていた「岩屋堂箪笥」があり、平泉文化を華麗に装飾した漆塗装の技術を現在に伝えています。
民芸箪笥について - 仙台民芸箪笥ができるまで
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材料は欅を主体として、桐・栗・杉などを用います。欅の木を切り出した原木を数年間寝かせ、加工する前に製材した欅材を野積みをして風雨にさらし、年月をかけて十分に自然乾燥させます。自然乾燥をすることで欅のアクが抜けるため箪笥製作後、狂い・割れが減少します。この欅の素材を使用して用途に応じた部材として使用され、突き板や無垢材として箪笥に使用されます。内部には桐の無垢材が使われ、桐の特性で大切な衣類を永く守ります。
欅の木目が映える“漆”を塗る作業。平均半月以上という時間を掛け、最も手数のかかる工法をかたくなに守っているのは、時の経過とともに、欅の木目が一層その鮮明さを増し、独特の深みがだせるのは「漆」しかないからです。仙台民芸箪笥には、3種類の塗りがあります。刷毛で塗っては布で磨く「拭き漆」、漆に朱の顔料を加えた鮮やかな「朱塗り」、そして、一名「馬鹿塗り」とも云われるほど漆を塗っては研ぎ出し、また塗っては研ぐという工程を何度も何度も繰り返えす「木地呂塗り」。伝統的な塗り方で塗表面が厚く、欅の木目が一層引き立ちます。時の経過とともに、透明感が増し、欅の木目が一層鮮やかに浮かび出て化学塗料では表現し得ない風合いを出します。
「手打ち金具」といわれるもので、その一つひとつが金槌と鏨と鑢を使い、絵模様を作り出されます。鉄板の裏に図案をあて、金槌で叩いて刻んでいき、表からは線刻し、伝統的な絵柄である龍や獅子が生きているように浮かび上がらせ、更に裏側から金槌で打ち出し、更に膨らみを出し、立体的な彫金を仕上げていきます。